乳がんの告知を受けてから、私は何度も「自分の体のことを、私はどれだけ知らずに生きてきたんだろう」と考えるようになりました。
がんの広がりを調べるために受けたCTやMRI検査。
その中で、思いがけず指摘されたのが「副腎(ふくじん)」でした。
それまで私は、副腎という臓器の存在すら、ほとんど意識したことがありませんでした。
でも、乳がんの精密検査をきっかけに、またひとつ「見過ごせないもの」が見つかってしまったのです。
自覚症状は、ほとんどありませんでした。
だからこそ余計に、「何が起きているのか分からない怖さ」がありました。
すぐに結果が出るものだと思っていたのに、気づけば内分泌系の検査で2ヶ月近く病院に通い続けることに。
今回は、その原因を突き止めるために受けた副腎の本格的な精密検査当日のことを、記録として残しておこうと思います。
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朝イチから始まった、副腎の精密検査
検査当日は、朝から絶食でした。
指定された時間に病院へ行き、案内されたのは処置室のような静かな空間。
そこに置かれたベッドを見た時、「ああ、今日は本格的なんだな」と、じわじわ緊張が増していきました。
今回の検査は、点滴で薬を流し、その反応を見ながら何度も採血をしていくもの。
つまり、ベッドの上で約2時間、ほぼ動かずに過ごす必要があるということでした。
しかも、スマホを触るのも基本的には禁止。
ただ静かに横になって、時間が過ぎるのを待つしかありません。
「2時間も何もしないでいるなんて、逆につらそう」
最初はそう思っていました。
でも、いざ始まってみると、その時間は思っていたのとは少し違うものになっていきました。
30分おきの採血と、静かに流れていく時間
検査中は、30分おきに看護師さんが来てくれて、薬の注入や採血をしてくれました。
そのたびに少し緊張して、少し気を張って、また静かになる。
その繰り返しです。
病院独特の空気。
白いカーテン。
控えめな物音。
静かに進んでいく医療の時間。
その中で、私はただベッドに横になっていました。
何もできない。
何かを頑張ることもできない。
ただ、自分の体の反応を待つだけ。
それは不安でもありましたが、同時に、どこか不思議な感覚でもありました。
2時間のベッド拘束で、思いがけず見つけた「小さな休息」
検査前は、「長いな」「退屈そうだな」と思っていた2時間。
でも実際には、室温も心地よく、ベッドも柔らかく、静かな空間に身を預けているうちに、気づけば私は少しずつ眠気に包まれていきました。
そして、いつの間にか、うとうとと眠っていたのです。
そのことに自分でも少し驚きました。
なぜなら、あの頃の私は、心のどこかがずっと張りつめていたからです。
乳がんの告知。
次々と入る検査。
先の見えない治療。
お金のこと、家のこと、これからのこと。
考えなくてはいけないことが多すぎて、
頭も心も、ずっと「休んでいるつもりで休めていない」状態だったのだと思います。
「具合が悪い時くらいしか、昼間に横になれない」現実
ふと、そんなことを思いました。
昼間にベッドでゆっくり横になるなんて、私の中では「具合が悪い時」くらいしか許されないことのように感じていたのです。
普段なら、横になっていてもどこか落ち着かない。
「何かしなきゃ」「まだやることがある」と、結局気持ちが休まりません。
でもあの日は違いました。
病院という場所で、検査という名目があって、
「今日は何もしなくていい」と、ある意味で強制的に立ち止まらされた時間。
それが、私にとっては意外なほど穏やかで、少しだけ救われるような時間になっていました。
もちろん、検査そのものは不安でした。
結果が怖くないわけではありません。
でも、その2時間の中で私はほんの少しだけ、
「休むことを自分に許せた」ような気がしたのです。
あんな形でしか休めなかったのは、少し切ないことでもあるけれど。
それでもあの静かな時間は、確かに私を少しだけ整えてくれました。
数値で突きつけられた、「朝が弱い理由」
検査の結果、先生から説明されたのは、私の体の中でコルチゾールというホルモンの数値が、正常より低めであるということでした。
コルチゾールは、ストレスに対抗したり、体を活動モードに切り替えたりするために必要なホルモンのひとつだそうです。
そして、その働きには脳からの指令も関係していて、どうやら私の場合は、その指令の出方も少し弱い可能性があるとのことでした。
先生の話を聞きながら、私は心の中で「えっ」と思っていました。
なぜなら、その説明に、思い当たることが多すぎたからです。
昔からずっと「朝が弱すぎる人」だった
私は昔から、朝が本当に苦手でした。
目覚ましが鳴っても、すぐには起き上がれない。
体が重い。
頭がぼんやりする。
起きるまでに、かなり時間がかかる。
ずっと私は、それを「自分の性格」だと思っていました。
朝型じゃないだけ。
低血圧っぽいだけ。
気合いが足りないだけかもしれない。
そうやって、深く考えたことはありませんでした。
でも、今回の検査で「もしかしたら、それにはちゃんと理由があったのかもしれない」と知ったのです。
自分の体のことなのに、知らないことばかり。
ずっと一緒に生きてきたはずの自分の体なのに、分かっていないことだらけでした。
その事実は少し切なくて、でも同時に、どこか納得するような気持ちもありました。
「怠けている」とか、「自分がだらしない」とか。
そうやって片づけてきたことの中にも、実は体からのサインが隠れていたのかもしれない。
そう思うと、自分に対して少しだけ見方が変わった気がしました。
診察室で聞いた結果と、これから続く5年間
検査が終わってから、結果が出るまでの時間もまた、長く感じました。
処置室を出て、少し待って、呼ばれるのを待つ。
病院ではその「待つ時間」が、いつも必要以上に長く感じます。
特に、自分の体に何かがあるかもしれないと思っている時はなおさらです。
そして、検査終了から約1時間半後。
ようやく診察室に呼ばれました。
私はかなり緊張していたと思います。
先生の表情や声のトーンひとつにも、敏感になっていました。
ひとまず「正常値」。でも、完全に終わったわけではなかった
結果は、正常値でした。
薬で刺激を与えた時に、体はきちんと反応していた。
つまり、副腎そのものの働きは、ひとまず保たれているということでした。
その言葉を聞いた時、私は本当にほっとしました。
胸の奥にずっと引っかかっていたものが、少しだけ軽くなったような感覚でした。
でも、そこで完全終了ではありませんでした。
副腎の「腫れ」そのものがなくなったわけではないからです。
そのため今後は、5年間、年に一度のCT検査と血液検査で経過観察を続けていくことになりました。
「異常なし」で終われたわけではなく、
「ひとまず大きな問題はなさそうだから、これからも見ていきましょう」という形。
病院との付き合いは、やっぱりここで終わるわけではないのだと、改めて実感しました。
乳がんの転移チェック。
手術や治療の経過観察。
そして、副腎のフォロー。
これから先も、私はしばらく「病院と一緒に暮らしていく」ような時間を過ごしていくのだと思います。
乳がんをきっかけに、全身を見つめ直すことになった
恥ずかしながら、乳がんになるまで私は「副腎」という臓器をほとんど知りませんでした。
もちろん、名前を聞いたことくらいはあったかもしれません。
でも、それがどこにあって、何をしていて、どんな時に異常が見つかるのかなんて、考えたこともありませんでした。
だからこそ、今回こうして詳しく調べてもらう中で、
「人の体って、自分が思っている以上に繊細で、複雑なんだな」と感じました。
乳がんの結果そのものは、私にとって絶望に近いものでした。
でも、その一方で、今回の告知がきっかけになって、
今まで見えていなかった全身の状態をくまなく診てもらえたことは、ある意味では不幸中の幸いだったのかもしれません。
「自分を識ること」が、未来の自分を守ることにつながる
自分では元気なつもりでも、体の中で何が起きているかは、自分では分かりません。
不調がないから大丈夫。
症状がないから平気。
そう思っていても、実際には静かに進んでいるものがあることを、私は今回身をもって知りました。
だからこそ、こうして医師の力を借りながら、
今の自分の状態をきちんと知っていくことは、とても大切なのだと思います。
それは不安を増やすためではなく、
未来の自分を守るための確認作業なのだと、今は少しずつ思えるようになってきました。
「自分を識ること」って、時に怖いです。
知りたくなかった現実に出会うこともあります。
でも、それでも。
知らないまま過ごすより、きっと意味のあることなのだと思います。
Rino’s Choice|検査や通院の日に、少しだけ自分をいたわるもの
検査が続く時期は、体力だけでなく、気づかないうちに心まで消耗していきます。
大きな何かを変えなくても、ほんの少し「自分を楽にしてくれるもの」があるだけで、気持ちが救われる日があります。
ここでは、通院や待ち時間の多い日々の中で、そっと寄り添ってくれそうなものをやさしくご紹介します。
着脱しやすいストール・ショール
病院は、季節に関係なく冷えることがあります。
待ち時間が長い日や、検査で体温が下がりやすい日には、軽く羽織れるストールやショールがあると安心でした。
肩にふわっとかけるだけで、体の冷えだけでなく、気持ちまで少し落ち着くことがあります。
着脱しやすく、荷物になりにくいものは、通院バッグに一枚入れておくと心強い存在です。
ハンドクリーム
病院では手洗いや消毒の回数が自然と増えるので、気づけば手元がカサついていることもありました。
そんな時、やさしい香りや低刺激のハンドクリームを少し塗るだけで、張りつめていた気持ちがふっと緩む瞬間があります。
検査や診察が続く時期ほど、こういう小さな「自分をいたわる習慣」が大切なのかもしれないと感じました。
歩きやすいスニーカー
大学病院はとにかく広くて、想像以上に歩きます。
診療科を移動して、検査室へ行って、会計へ向かって……。
体調が万全ではない日にその移動が重なると、足元の負担は思っている以上に大きいものです。
履きやすくて疲れにくいスニーカーがあるだけで、通院の日のしんどさが少し変わることもありました。
【PR】心まで疲れてしまう前に、話せる場所を持っておく
病気のことって、体のしんどさだけでは終わりません。
検査結果を待つ不安。
先の見えない治療への怖さ。
誰にも言えない気持ち。
「大丈夫」と振る舞いながら、心の中だけが静かに疲れていくこともあります。
そんな時、無理に一人で抱え込まず、
「話してもいい場所」があることは、思っている以上に大切なのかもしれません。
もちろん、誰にでもすぐ相談できるわけではないし、言葉にすること自体が難しい日もあります。
でも、自分の気持ちを少しずつ整理したい時、
専門家の力を借りるという選択肢があることを知っているだけでも、心の支えになることがあります。
気持ちを整えるための、やさしい選択肢として
不安や緊張が続く時期は、心までガチガチに固まってしまいがちです。
そんな時に、カウンセリングのような「自分のために気持ちを整える時間」があることは、決して特別なことではなく、必要なケアのひとつなのだと思います。
すぐに答えを出すためではなく、
今の自分の気持ちを少しだけ言葉にしてみるために。
そういう場所を持っておくことも、ひとつの支えになるかもしれません。
【PR】自分自身に、心から「お疲れさま」を届けたくなった日
検査が続く日々は、心も体も、思っている以上に消耗します。
病院の無機質な空間から帰宅したあと、
ふと部屋の中に目を向けた時、そこに少しでもやわらかいものがあるだけで、気持ちがほどける瞬間があります。
私はこの頃、
「自分を励ます」というより、自分を労わることの方が必要だったのだと思います。
何かを頑張るためではなく、
ただ今日をよく乗り切った自分に、「お疲れさま」と言ってあげたくなるような気持ちでした。
暮らしに花をひとつ足すだけで、心が少し整うことがある
そんな時に、部屋に一輪の花があるだけで、空気が少し変わることがあります。
病院で緊張していた心が、家に帰ってからふっとゆるむ。
何気ない日常の中に、小さな彩りがあるだけで、「今日も大丈夫」と思えることもあります。
もし今、自分のことを後回しにしすぎていると感じるなら、
こういう小さなご褒美を暮らしの中に取り入れるのも、やさしい選択肢のひとつかもしれません。
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(市場直送の季節のお花が、ポストに届く“自分への小さなご褒美”です)
副腎の不安がひとつ晴れて、私はまた次の準備に向かう
副腎の疑いは、ひとまず大きな問題ではないと分かりました。
もちろん、今後も定期的なチェックは必要です。
それでも、「今すぐ深刻な状態ではない」と確認できたことは、私にとって本当に大きな安心でした。
乳がんの告知を受けてから、私は何度も「自分の体の中に、まだ知らない問題があるかもしれない」と怯えてきました。
だからこそ、不安をひとつずつ確認して、ひとつずつ取り除いていくこと。
それが今の私にできる、現実的で大切な準備なのだと思っています。
大きな病気を前にすると、未来のことを一気に考えすぎてしまいます。
でも本当は、全部を一度に乗り越えなくてもいい。
今の自分にできることを、ひとつずつ整えていけばいい。
副腎の検査を終えたあの日、私はそんなふうに少しだけ思えるようになっていました。
次回予告|形成外科で突きつけられた「再建の傷跡」という現実
副腎の不安がひとつ晴れ、ようやく少しだけ呼吸ができるようになった私。
でも、乳がんの治療そのものに向き合う現実は、まだここから続いていきます。
次回は、いよいよ乳房再建に向けて受けた、形成外科での診察について書こうと思います。
そこで私が突きつけられたのは、
「再建すれば終わり」ではない、もうひとつの現実でした。
見た目を戻すことと、心が戻ることは、必ずしも同じではない。
そのことを痛感した日の記録です。
▶︎ 次回の記事はこちら
乳がん体験談【第13話】副腎検査の結末と、形成外科で突きつけられた「再建の傷跡」という衝撃
※本記事は、私自身の体験をもとに綴った個人の記録です。症状や検査内容、治療方針には個人差があります。体調や不安がある場合は、必ず医療機関や専門家へご相談ください。
また、記事内でご紹介している商品・サービスは一例であり、すべての方に当てはまるものではありません。ご自身の体調や状況に合わせて、無理のない範囲でご検討ください。

